蒼 穹

 03. 父には何か秘密がある

「僕は……」、と、少年は眉をしかめ、視線を床に落とした。しばらく考えてから、
「父さんは研修のための出張だって言ってた。でもさ、学校の先生の研修って、学校が休みの時にあるんじゃないの? 夏休み中とかさ。父さん、夏休み中はさんざん遊んでたよ。それが新学期始まったとたんに、一週間以上も研修だなんて。その間、数学の授業、ないんだよ、かわりの先生いないもん。どう考えたって変だよおかしいよ。だから僕は、疑ってるんだ」

「なにを?」

「父さんには何か秘密があるんじゃないかって、僕は疑ってるんだ!」

 少年は真剣な目で甚平を睨むように見た。甚平はその目を受け止め……ぶっ、とビールを噴いた。

「あーごめんごめん、いやいやいや、うーん、おまえが疑うのも無理はないかもしれない、そうか、いや、そうにちがいない!!」

「ねーなにがそうなんだよ、ねー甚平さんは何か知ってるの!?」

「うむ……」甚平は腕組みをし、威厳を取り繕う。「おやじは一週間前から出張、おふくろも家出。このふたつは、繋がっている!」

「――どういうこと?」
「これはだな」
「うん」
「ハネムーンだ」
「ハ?  新婚旅行?」
「間違いない!!」




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