蒼 穹
07. 我々はその瀬戸際に立ち、深淵をのぞき込んだ
「ギャラクターの襲撃は極めて手荒で、残虐の一語に尽きました。ウラン貯蔵庫、石油コンビナート、ありとあらゆる地下資源を襲うだけでなく、その付近にある研究施設も大都市も住宅地も観光地も、彼らは容赦なく巻き込みました。
そのようにして資源を横取りする彼らの目的は何だったのか。世界征服。世界を我が物にしようとしたのです。そのために彼らは手段を選びませんでした。実に多くの人の生命、実に多くの自然、実に多くの都市、実に多くの知識と技術が暴力的な力によって奪われた。そして彼らのとった最後の作戦、ブラックホール作戦は、この地球を消すという、実に、想像もできない、恐るべきものでした。
次の瞬間には地球は宇宙から消える、我々はその瀬戸際に立ち、深淵をのぞき込んだ。
わかりますか。諸君。二十年前、その瞬間が存在したのだ。
そのことを多くの人は知りません。しかし確かに存在したという事実を、多くの人はその心でもって感じ取っていたようです。
その悪意と敵意に、人々は慄きました。人々の心は深く深く傷ついた。だがそれでも生きなければならない。傷ついた心を抱え、人々は顔をあげて復興にとりかかりました。が、地球ブラックホール化作戦によって影響を受けなかった土地は、地球上に一か所もありませんでした。都市は崩壊し、山脈は崩れ、大陸は傾き……近年の世界地図が公表されないのは、かつての世界とあまりにも変わってしまっているからなのです。その一端を、これからお見せしましょう」
視聴覚室の窓に暗幕が引かれ、スクリーンに映像が映し出される。高空から地上を撮影したものだ。陸地と、海岸線が映っている。
「この撮影を最後に、この航空機は飛行を断念しなければなりませんでした。私が言ったことを、覚えていますか。ギャラクターが地下資源を軒並み奪いまくっていった、と。さらにブラックホール化作戦によって地下はかき乱され、まだあったはずの資源の行方がわからなくなってしまった。諸君にとって計画停電はお馴染みのものでしょうが、今残っている資源はきみたちの生活を支えるために使われている。それも、少しずつ使わなければ、やがて、尽きてしまう。
――これは、この最後のフライトで撮影された海岸線と、かつての世界地図とを重ね合わせたものです――」
今度こそ、どよめきが起こった。重ねた、と校長先生は言った。だが、重なっているのは半分くらい――