蒼 穹
08. 知らなければよかった、そう思うか?
(最後のフライト、か)
ゴッド・フェニックスの最後の仕事は地球の平和を守ることではなかった。ギャラクターのブラックホール作戦によって地上がどうなったか。調査し記録することに絞られた。もはや、燃料がなかったからだった。
(あれはさすがに堪えたよな。燃料がない、なんてさ。俺たちはもう飛べないんだ、って……)
「地上がこのような有様になった経緯、きみたちが暮らすユートランドはかつて高層ビル群が林立する大都市だった。しかし今や、その面影もない理由を、話してきました。
二十年前、いかに多くのものが失われたかを言い表すことは……私にはできない。二十年経った今でさえ。
失ったもの、いや、奪われたものの大きさ、受けた傷、恐怖の記憶。どうかそれらを想像してみてください。それらが、あの地獄のような日々を体験した人々に、事件を口にすることをためらわせるのだ、と。
私は、二十年前の一連の事件が起こした災害の規模は、この文明の崩壊につながる可能性があると考えています。近年、その兆候が表れてきている。きみたちが生きているのは、そのような世界であり、時代なのです――」
少年は両手で頭を抱えている。彼はくぐもった声で言った。
「話は今日で終わりだって、校長先生、言うんだ。それで今日は六時間目の授業と放課後一時間、ぶっ通しで……。ねえ、自分で望んだこととはいえ、こんな話聞いたら、眠れないよ。うちへ帰ったらこんな置手紙があるし。とても一人じゃ、いられなかった」
「ああ……だろうな……」
「甚平さんは、知ってたんだ」
「まあな。ジョージ。知らなければよかった、そう思うか?」
少年は頭を抱えたまま、返事をしなかった。それもまた返事だよな、甚平は口の中でつぶやくのだった。