Mesoamerica

ドレスデン絵文書


(Dresden Codex)
マヤの書物である。南北アメリカでもっとも古い本であり、13世紀から14世紀のものとされる。このコデックスがドイツのドレスデンで見つかったためにこの名がある。ザクセン州立図書館兼ドレスデン工科大学図書館(英語版)の博物館が所蔵する。
アマテに書かれており、縦20センチメートルで蛇腹折りの形式で書かれ、引きのばすと3.7メートルの幅になる。マヤ文字で書かれ、筆写時期より300-400年前の原文を記している。第二次世界大戦で水に漬かり、深刻な損傷を受けた。

絵文書は10章に分けられる[30]。
1・序。神々の衣装(pp.1-2)、フン・アハウへの犠牲(p.3)、神々への祈願と神託の準備(pp.4-15)。
2・月神イシュ・チェルの暦(pp.16-23)。イシュ・チェルは癒しの神であり、また病気をもたらす。
3・金星表(pp.24,46-50)。金星神の図像と情報。584日の金星の会合周期を使い、312年にわたって金星の明けの明星または宵の明星としての現れ方を記す。金星は攻撃的な神と考えられており、おそらく軍事行動の成否を計算するために用いられた。
4・日食と月食の表(pp.51-58)。マヤ人は食を不吉で危険なものと考え、祭儀や犠牲によってその影響を避けようとした。
5・78の乗算表(pp.58-59)。78という数にどのような意味があったかは不明である。
6・カトゥンの予言(p.60)。カトゥンの終わりに起きる災害について。マヤ暦においてカトゥンは約20年の周期で、13カトゥン(256年あまり)で一周する。周期の終わりは飢饉・旱魃・地震のような災害と結びつけられていた。4つの空白のページを含む絵文書の裏面の最初の部分である。
7・蛇の数字(pp.61-62)と世界の柱(pp.63-73)。蛇の数字は約3万年間に起きる神秘的な出来事を示す。その後には世界の柱について、および雨の神であるチャクのさまざまな現れについて記す。マヤにおいて時間の起源は雨の起源と結びついていた。ここでは古典期マヤのパレンケティカルの碑文と同じ用語が用いられている[30]。
8・大洪水(p.74)。洪水による宇宙的災害を描写している。マヤの伝統に従い、現在の世界の滅亡は、過去に存在した3つの世界の滅亡によって予言されている。
9・新年の祭り(pp.25-28)。ハアブの最後の5日に王と神官が行う祭儀について記す。新年の祭りは破壊された世界の象徴的な再創造と考えられていた。
10・農業の予言暦(pp.29-41)、雨の神と火星の運行(pp.42-45)。予言暦は天候や収穫について述べる。42-45ページは雨の神の旅と、780日の周期をもつ火星の動きを記す短い節である。最後のページの最後の部分には91の乗算表があるが、この数字の意味は不明である[30]。





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